2020/11/20

SSI2020 感染症蔓延時の行動変容を加味した感染症シミュレーションの構築

M1の松井です. SSI 2020で「感染症蔓延時の行動変容を加味した感染症シュミレーション」というテーマでの研究の進捗を報告してきました.

SSI 2010の開催要項の詳細は以下です.
学会情報
学会URL:https://ssi2020.sice.or.jp/index.php
学会日時:2020年11月15日 (日) – 17日(火)
学会会場:オンライン
発表タイトル:感染症まん延時の行動変容を加味した感染症シミュレーションの構築

この学会は,私にとって今年度2回目の学会だったのですが, コロナ禍によるオンライン開催によって様々な苦労がありました.

まず,学会の形式として

  1. 学会をスムーズに進行するために2分間の研究紹介動画を作成して提出する.
  2. 学会専用のサイトを用いて事前に動画を視聴する
  3. 学会当日はSlack というチャットツールを利用し、ポスターを用意した状態で質問者を待つ

という時代を反映した,準備が多く必要な学会でした.

事前の動画では自身の研究のエッセンスを2分間に詰め込む作業や,詰め込んだ後噛まずに収録することを求められ考えをまとめる難しさと,またわかりやすく人に伝える難しさを実感しました.

以下作成した研究紹介の動画とポスターです.

当日は4人の聴講者から質問をいただくことができましたので,いかにQ&Aを掲載します.
Q1. なぜ与論町を対象としたのか

A1. 2020年7月にクラスター感染が発生し,医療の逼迫具合が注目された離島だったため.
感染症対策において,もっとも懸念すべきはリスク者が多く,また対応するための医療資源の少ない地域です.鹿児島県大島郡与論町は島内に病院が1つしかないため,クラスターが発生した場合は沖縄県本島や,鹿児島市へ患者を輸送する必要があります.そのような医療資源の少ない地域で感染症が広がる場合どれくらいの被害を想定し,事前に準備するかが重要になります.

Q2. 模擬個票*1にどのようにして就業先の情報を付与したのか

A.2 経済センサスで取得した事業所と模擬個票が持つ業種分類の情報で絞り込み,ランダムに割り振りました.
模擬個票とは,大阪大学の村田,青山学院大学の原田らが,国勢調査を統計的に複合した世帯構造を持つ合成人口です.この模擬個票には就業先の情報が含まれていなかったのですが,感染症の広がりを表現するために属性として付与してある業種を用いて.経済センサス*2より取得した事業所の事業種を複合することで業種の付与を行いました.
一周22kmの離島であるためできた方法論であるため,大規模化には難しいことが問題点として指摘されました.

Q3. 最大感染者数が約700名という結果は妥当か

A3. 本研究の最終的な目標は発生しうる多様なシナリオを用い他訓練のため想定することも妥当である.
この質問に対しては上手に答えられなかったのですが,感染症の広がりのピークがこの狭い党内で700人ほどになるケースなどありえるかという質問でした.本研究の進捗として多様な生活における行動や,予防行動を組み込めていないため,現実的ではないが,何も感染症対策を行わない場合こうなることも発生しうるという結果として発表しました.
モデルを複雑化し,現実と同じようなシナリオを表現できた時妥当なモデルが作成できたのではと考えます.

Q4. 「中学校が感染のハブになった」という結論の妥当性は

A4. 多くのネットワークが交差する点が感染の起点になる
本研究ではシミュレーションの結果として,蔓延する際には中学校への感染の山が事前に発生していたと説明しています.与論町ないにある教育機関は小学校が3校,中学校と高校が1校のとなってり,高校生より比較的に人口の多い中学生での感染の蔓延が,家庭,職場と2次,3次感染することにより島内全域に蔓延したと考えられます.本モデル上ではたまたま中学校が感染の中心地となりましたが,人口構成や都市の構造で,多くのネットワークが交差する点が感染症の起点となることが表現できました.

話題の研究テーマであったため多く質問をいただけ,実りの多い学会でした.今後はモデルの多様化と現状でできていないタイトル回収を行いますので,続報お待ちください.

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