2022/03/10

【第27回社会システム部会】HPVプロジェクトの発表

こんにちは。そろそろm2になる塚本です。

2022年3月6日から8日にかけて、社会システム部会研究会という学会が行われました。去年の夏にも行われた学会と同じですが、それよりも規模が若干大きく、各々明確なアウトプットを用意していました。そんな学会に私も登壇してきました。学会は3日間かけて行われ、発表する内容次第で発表時間が異なります。事前に投稿した論文の査読結果によって、私は「ミドル」の発表区分に割り振られました。ミドルは15分発表の5分質疑応答です。本日は、その15分の中で発表した内容について述べたいと思います。

私が発表した内容はHPV感染者の推移をシミュレーションしたものです。HPVとは「子宮頸がん」というがんの原因となるウイルスで、性交渉により感染します。HPVは大抵の場合、免疫により排除されますが、排除されない場合はがんへと進行していきます。子宮頸がんまで進行した場合、最悪死ぬ可能性があるため、対策が急がれています。ウイルスの遷移は以下のようになっています。

HPV感染の対策として、HPVワクチンがあります。小学6年生〜高校1年生の女性が対象で、一度接種すれば12年効果があると言われています。2013年には、政府によるHPV接種の積極的勧奨が行われ、1997年に生まれた人の接種率は8割まで伸びました。しかし、副反応などの負のイメージが拡散し、現在では接種率がほぼ0%まで下がっています。

このプロジェクトでは、現在接種率が0%であるHPVワクチンの接種率を上げた場合、子宮頸がんの患者数・死者数をどれくらい削減できるのかを、シミュレーションを用いて定量的に表すことを目的としています。本研究では、まだアブストラクトに近い、基礎的なモデルでの発表でした。モデルの概要は以下のようになっており、HPVが性交渉によって伝播していくことを表現しています。また、HPVワクチンの接種率だけでなく、定期的に検診を行うことで、子宮頸がん患者の推移にどのような違いがあるのかも分析しました。

結果は以下の通りです。上のスライドがウイルスレベル1、つまりHPVの感染者数の推移を表しています。左右の図では、HPVワクチン接種のあり・なしを表しています。特に、①と②の図を比較すると、①の政策なし(現状維持)では40年目の感染者数が4000人程度であるのに対し、②のワクチン接種した場合では2000人程度で、ほぼ半数となっていることがわかります。このことから、本モデルにおいてHPVワクチンの効果が反映されていることが明らかとなっています。

下のスライドでは、上のスライドの「Infection_2」「Infection_3」の部分を拡大した図となっており、子宮頸がんによって亡くなった人数を横に記載しています。「Infection_2」「Infection_3」とは、子宮頸がんの前段階の状態を表しているもので、先ほど述べたウイルスレベルの2と3に該当します。これは、定期検診が機能しているかを確認するために作成した図で、上下で定期検診に行く・行かないを表しています。元の人数の少なさもあり、上下の図でウイルスレベル2、3の違いは見られないものの、子宮頸がんによる死者は少なくなっていることがわかります。

社会システム部会では上記のような発表を行いました。今回の発表を受けて、学会に参加していた先生方や、論文をチェックしていただいた参加婦人科学会の皆様から多くのアドバイスをいただきました。それらをもとに、今後、より現実に則した詳細なモデルの設計を行なっていきたいと考えています。

関連記事はこちら