2022/03/10

【情報処理学会】AIの発展による大学学科の盛衰分析

こんにちは。そろそろm2になる塚本です。

2022年3月3日から5日にかけて、第84回情報処理学会全国大会が行われました。本日はそこで発表した内容について述べたいと思います。ちなみに発表は学生セッションの12分発表で、区分は「情報システムと社会環境」でした。自分の研究は「AIの発展による大学学科の盛衰分析」というタイトルで、概要は以下の通りです。

生産年齢人口の減少による働き手不足などから,AIの発展が加速している.加えて,将来なくなる可能性がある仕事についての分析が進められており,近いうちに産業の構造が変化する可能性がある.本研究では,日本の社会にAI等の技術が浸透することによって,産業と密接な関係にある大学にどのような変化が発生するかを分析する.日本の大学は,学生の就職先を考慮したカリキュラムを編成しており,学生は入学時点で大方の就職先が決定している.そのため,大学の学科別における就職先と,就職先の仕事の将来性を繋げることで,学科の需要の増減が判明すると考えた.本研究の結果は,大学の経営戦略に活用することが期待できる.

将来なくなる仕事が予測されており、その影響というのは、「就職」という関係性で繋がっている大学にも影響すると考えました。そこで、Frey & Osborne(2013)のなくなる職業に関する研究を参考にし、なくなりやすい学科・なくなりにくい学科とはどのような学科なのかを分析することにしました。

分析方法としては、大学のデータベースと先行研究のデータを結合し、データを可視化することで、なくなりやすい職業の特徴を表します。「スタディサプリ進路」という大学のデータベースにおいては、それぞれの学科からどのような就職先業界に就くのかが公開されており、その就職先に先行研究のなくなりやすい職業を統合します。これにより、各学科がどれくらいなくなりやすい職業先を持っているかがわかります。

統合させた結果の一つが以下のスライドです。文系学科の経営学、理系学科の情報学をピックアップしました。円の大きさがその学科から就職できる業界の数を表しており、文系と比較して理系の方が就職先業界が少ないです。理系大学ではその専門性の高さから、どうしても就職先の業界が限られることが考えられます。一方で、文系大学では、理系大学ほど学習した内容を活かそうとしない傾向にあり、例えば事務や営業など、どの職業にもある職に就く傾向があるのではないかと考えます。

また、大学学科別でなくなりやすさを表す割合と偏差値の関係を図示したところ、多くの学科でなくなる職業を持っていないことが判明しました(下図の左側、色が濃いほど大学データが密集している)。この図の、なくなる職業所持率0%のエリアについて、偏差値でどのような違いがあるかを、自然言語処理で分析してみました。分析するテキストは、スタディサプリ進路に存在する「学科で学べる内容」「学科カリキュラム」「卒業後の進路」などの文章を対象としています。

ここで低偏差値群(30~40)と高偏差値群(50以上)についてワードクラウドで可視化すると、以下のような結果となりました。考察として、低偏差値群・高偏差値群、両方において医療のワードが大きく出現しており、医療系の仕事はなくなりにくいことがわかりました。その中でも、低偏差値群は福祉やスポーツなどの体を使用して働くものが多く、逆に高偏差値群では研究や技術など、自分で開拓する学問が多く出現しました。

上記の大学データは私立大学のみのデータなので、今後は国公立大学も含めてどのような違いが発生するかを検討していきたいと考えています。

関連記事はこちら