2023/01/23

防災訓練、現場を体験して変化した価値観

新年明けましておめでとうございます。修士2年の塚本です。あと3ヶ月もしたら卒業してしまうので、振り返り的な意味も込めて、今まで参加してきた防災訓練について、所感を述べていこうと思います。

市川研の立ち位置 〜D24H〜

市川研では、災害時保健医療福祉活動 情報支援システム「D24H」※1というシステムの設計に携わっています。このシステムは、被災地の情報を統合的に提供するシステムであり、簡潔に述べると、被災情報のデジタル化を行い、被災地への迅速な支援活動を行うことを目的としたシステムです。このシステムでは、保健所や避難所などの、避難者が集まる施設が情報を入力し、それらの被災情報を市役所や県庁が閲覧し、最も被害が大きい場所や不足している物資などを確認することができます。

市役所や県庁での防災訓練では、架空の災害を想定し、架空の被害情報が保健所から送られてきます。それらの情報をもとに、どこへどのような情報伝達をすれば良いのか、人手は足りているのか、不足しているなら誰がどこへ応援を求めるのかというような、実践ベースの訓練を行うことがあります。他にも様々な訓練の種類があり、市川研ではD24Hを操作しながら、訓練をコントロールする立場にあります。

一方で、避難所における防災訓練では、システムがどのように扱われるか、データを送信する人はどのような手順で行えばいいかなどの講演が主となっています。特に、現場ではこのシステムへの理解が求められます。なぜこのシステムを導入する必要があるのか、なぜわざわざ情報をデジタル化しないといけないのか、などの一つ一つの声に対して真摯に応える必要があると思います。それだけ現場の人たちは逼迫し、余裕がなくなります。

※1:D24Hの詳細について知りたい方は災害時保健医療福祉活動 情報支援システム -D24H-を参考にしてください。

防災訓練の例① 〜沖縄県南城市〜

南城市では2021年、2022年に大規模な防災訓練が行われ、市川研はその訓練に参加しました※2。この市役所はいくつかの村が合併してできた大きな市役所となっており、保健所の機能も兼ね備えてあります。この訓練では、実際に住民が参加し、避難の手順について確認したり、自衛隊による炊き出しを頂くなど、実際の避難を体験するようなものとなっていました。住民の他にも、電柱が倒れた際の撤去訓練や、避難者が施設に取り残された際の救出訓練など、様々な訓練が並行して行われていました。また、いくつかの企業は、避難所で使える最新技術などを公開しており、濾過して繰り返し使えるシャワーを体験できるブースもありました。

南城市の防災訓練の所感として、規模に圧倒された、の一言です。市役所から保健所、炊き出しやトリアージをする自衛隊、電柱を撤去する企業、技術を展示する企業など、災害を想定した様々な訓練が行われており、一つ一つに圧倒されていました。普段、このような大規模な防災訓練に参加する機会がなかったため、新たな知識に出会えました。

※2:参加した時の様子に関しては【沖縄県】南城市総合防災訓練【沖縄県】南城市総合防災訓練2を参考にしてください。2022年度版に関しては現段階で未公開です。しばらくお待ちください。

防災訓練の例② 〜北海道滝沢市〜

2022年12月、豪雪の中、滝川市の防災訓練にも参加しました。この防災訓練は学校の体育館で開催され、実際にダンボールベッドを組み立てたり、組み立てた段ボールベッドで宿泊する体験もありました。また、車中泊に関する講義なども開催されており、過去の被害を元にした、北海道独自の防災訓練でした。

こちらの所感としては、被害ベースの防災訓練であるため、「これをやってはいけない」が明確になっていることが印象的でした。例えば、車中泊の講義では、エコノミー症候群について取り上げられており、何が問題でどういう症状が発生するのかを、事例をもとに述べられていました。車中泊の問題を解決するためにも、避難所ではテント一体型の個室段ボールベッドを導入するなど、エコノミー症候群の被害をこれ以上増やしたくないという想いが真摯に伝わってきました。また、このような問題点から避難所の形は変わっていくことができるのだと感じ、多くの自治体にこのような問題意識が広がっていってほしいと思いました。

終わりに

私自身、実際の住民が参加する防災訓練は上記の2箇所しか体験しておらず、避難所によってはもっと大規模であったり、もっと最新の技術を取り入れたものがあると思います。まだまだ知識としては未熟ですが、自治体・避難所・保健所・住民の全てが災害に関する知識や意識を持ち、改善していくことが大切だと感じました。それぞれのステークホルダーが抱える問題点を解決するようなアイテム・技術・システムが導入されることにより、災害関連死の減少や避難所生活のQOLが向上することに繋がってほしいと思います。

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