通常ゼミ
通常ゼミは、毎週行われるゼミです。週1回120分で行なっています。取り扱う内容は「社会システム科学の思考」と「研究進捗報告」になります。
社会システム科学の思考
「社会システム科学の思考」では、新聞に掲載されている記事を起点に、社会システム科学のアプローチで記事の背景を理解し、解決に向けた科学的提案を行うことで、社会に出たときに新規の案件を探求できる思考を身につけることを目的とします。記事の背景を含め、他者に伝えることができ、市川研究室が取り扱う範囲での解決法のアイデアを出すことを目標としています。
準備期間は2週間で、学生は日ごろから気になる新聞記事をストックしていた中からゼミで取り扱う記事を選びます。記事を選んだ後は、記事に関係する社会的な背景や関係する論文、過去の記事や法律、対策案などの情報を集めます。必要に応じて報告書や速報なども調べます。情報が集まったらマインドマップに情報を整理します。

情報整理後は、解決に向けた科学的提案を、エビデンス(数字分析やアンケート、シミュレーションなど)付きで報告します。公開されているデータからデータ分析をするもの、数理モデルやエージェントベースモデルでシミュレーションをするもの、マイコンを利用してセンサからデータを取ってみるものなど、学生が自由に科学的根拠を作り出しています。

最後に、記事の概要、課題解決案、科学的根拠を1200字程度の文章にまとめて、ゼミの準備は完了します。ちょうどA4で一枚で収まる内容を2週間に1回アウトプットするということを行なっています。
記事概要
80年代以降、経済のグローバル化により人材や企業、資金、情報が国境を越え自由に動くようになると、それらを集められる大都市の力が強くなり、「国家間競争」より「都市間競争」に焦点が当たるようになった。90年前後はニューヨーク、ロンドン、東京が「世界都市」と呼ばれた。しかし、地価高騰や住民格差の拡大という負の面も指摘され、「創造都市」「持続可能性都市」など、より生活の質に着目した都市論が登場する。
現在の都市間競争について、加茂利男・立命館大教授は「グローバル化のなか、国や都市の経済力や影響力を強めるには単一都市を超えた圏域単位の大きな集積をつくる必要があり、世界各国でそうした動きが進んでいる」と指摘する。人口減少期に入った日本国内の状況については「各都市がマイナスサムの人口獲得ゲームをせざるを得ず、都市間競争はより熾烈になっている」とみる。都市間競争は総合力を競う「世界都市」の勝負から、独自の文化や技術を際立たせ知的人材や産業の集積を競う役割競争、国内での人口争奪戦など、規模や機能によって多次元で進行する時代に入っているといえる。市川研究室的解法と試行実験
人口の減少が著しい現代において、あらゆる自治体で地域の存続のために人口政策が行われている。自治体の存続のための施策としては、人口政策とは異なるが、関係人口を生み出し、地域を支援してもらう関係を地域外の人々と築く動きも見られるが、自治体が自活できていない前提でのアプローチとなるため、関係人口に関する分析の優先順位は低いものとする。
人口政策を大きく分類すると、出生数の増加を図るためのものと移住を促すものに分かれる。後者の移住を促すアプローチでは、地域間の人口移動が発生し、多くの自治体が人口問題を抱える中で、人口獲得を望む自治体同士で限りある資源の奪い合いを行っている可能性がある。つまり、人口獲得が成功した自治体が引き起こした相互作用は、他の自治体の存続、ひいては日本国内全体としての活動にとって有益な効果をもたらしているとは限らない。
日本全体として有益な結果をもたらすために、国土構造や経済体制のリスクヘッジを踏まえた機能の分散、総体としての円滑で継続的な都市活動等に関するシナリオを分析することを目的とした場合、目的達成に向けて、以下に示す5段階のフェーズが存在すると考えられる。1. 自治体の取り組みによる人口獲得の影響分析
市川研究室のゼミの報告資料より
2. 各自治体が存続するためにかかるコストの分析
3. 人口政策効果のシミュレーション
4. 都市のトリアージに関する分析
5. 都市の終活もしくは居住地以外の利用方法の提言のための分析
ゼミ当日は、研究室の学生全員を複数のグループに分け、各グループで1記事30分で議論を行います。最初の5分で報告文を読み、残りの25分で文章報告に対する質疑応答や課題解決案の深掘り、さらには科学的根拠を示すアプローチの確認などを行います。ゼミ当日は、A4一枚の情報からグループ内で討論することで、多様な知識を知るとともに、記事と記事をつなげる(関連性を見出す)ことを目指しています。
研究進捗報告
研究進捗報告では、各自の研究の進捗状況の報告やプロジェクトの研究報告を行います。
科学哲学ゼミ
「科学と呼ばれているものは何なのか?」という問いに対する答えを見つけるゼミを行なっています。科学哲学ゼミは、合宿形式(1泊2日)で普段は栃木県那須町の貸別荘を借りて行なっています。